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| 【 時間のトランク 】
――挨拶集「続 上善水の如し」より――
「カン」の中で特に大事なことは時間の『間』であります。
私達は今、人生80年時代という中に生きています。80年を時間に換算しますと70万と8百時間であります。私達が小学校から大学まで学校に通って勉強する時間は、一日平均3時間25分といわれています。約8万時間が学生時代に勉強する時間であります。通学、通勤する時間が3万時間といわれております。そして、仕事で働く時間は8万時間であり、合計しますと19万時間ということであります。一日8時間睡眠で考えますと、70万時間の内、3分の1の約に23万時間が睡眠時間ということになります。これらを引くと残り時間は28万時間ととなります。この28万時間が自分で自由に使える時間であり、どう使うかがとても大事であると思っております。
話をするときの『間』というものもとても大切です。この間の取り方の最も上手だった人は徳川夢声といわれております。絵を描くとき空間が大事です。空間をいかに上手に使うかということがすばらしい絵を描くことにつながります。
家の中にも『間』というのがあります。一間、二間といいますが、中国の故宮は最も間の多い場所であります。天上の天宮は1万間で、故宮の部屋数は、9,999と半間ということであります。皇帝は天宮より下だということで半間少ないといわれています。たとえば、今日生まれた赤ちゃんが故宮の一の間に泊まり、明日、二の間にその次は三の間に泊まるというように同じ部屋に一度も寝なくても故宮を出るのは、なんと27年と135日かかるわけで27歳を超えているということであります。それだけ間が多いということであります。
この間を大切にということでありますが、もう一つ大事なことは、先ほどの28万時間の考える静かな間という時間をとるということであります。一日30分ぼんやりする時間、考える時間であります。人と待ち合わせをして相手が来ないとき、無駄な時間と思われますが、私はそう思っておりません。そのような時にメモの整理をする、あるいはハガキを書く、言葉についても辞書を引いて調べるなど、わずかな時間をいかに有効活用できるかということこそがその人の資質を高める、ひいては「徳」に結びついていくということではないかと思います。
作家のアーノルド・ベネッサという人は「一日はトランクのようなものだ」と言っております。やり方さえ知っていたら、その中に二倍のものを詰める事ができる。そして、四隅と脇の方に隙間を作らないように詰めることが大事であるといっています。入れ方によってはトランクを二倍に使えるということだと思います。少しの時間をもうまく活用すればとても有効に使えるということです。皆様もこの時間というものを大事に使いながら益々のご活躍をお祈りいたします。 |